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定規のみを用いて与えられた線分に平行な直線を引けるのか?

こんばんは、simulo_yuiです。

simulo_yui (@simulo_yui) | Twitter

A. 引けません

これで記事を終わりにすると、とてつもなくつまらないので、もう少しだけお付き合いください。

世の中には定規とコンパスによる作図という概念があります。これについては以下のurlを参照してください。 定規とコンパスによる作図 - Wikipedia

この定規とコンパスによる作図、中学生の時にやったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。正三角形の作図だったり、角の二等分線の作図だったり、垂直二等分線の作図だったり。その作図の要領で、与えられた線分に平行な直線を引けるか?という問題です。この場合、定規は二定点を通る直線を引くことか、あるいは無作為に平面上に直線を引くことにしか使えません。

あるいは、コンパスを使用していいルールだったら、与えられた線分に平行な直線を引く方法を知っている方も多いかも知れません。では、定規しか使えない場合はどうなのでしょうか。この場合、以下の定理が成り立ちます。

定理

定規のみを用いて与えられた線分に平行な直線を引くことはできない。

この定理の証明に移る前に、次の補題の証明をしておきましょう。

補題

平面上に円がすでに与えられているとする。この際、定規のみを用いて円の中心を得ることはできない。

補題の証明

xy平面で考える。 平面上に与えられている円をCとする。以下の条件を満たす、PからPへの射影Tを考える。

(1)直線を直線に移す

(2)円Cを円C'に移す。

(3)円Cの中心Oを、円C'の中心O'に移さない。

このようなTが確かに存在すると仮定する。さらに、平面上に円がすでに与えられているとき、定規のみを用いて円の中心を得ることができると仮定する。このとき、円Cの中心Oを作図するような直線の列が存在する。このとき、直線の列の移る先の直線の列も円C'の中心O'を作図する。(Tは2曲線が交わる/接する/共有点を持たないといった性質を保存し、定規は二定点を通る直線を引くことか、あるいは無作為に平面上に直線を引くことにしか使えないため。)しかし、これは(3)に矛盾する。

さて、仮定したようなTは確かに存在する。 例として、(x,\,y)(\frac{\sqrt{2}x+1}{x+\sqrt{2}}, \, \frac{y}{x+\sqrt{2}})に移すような射影はTの条件を満たす。_\Box

よって補題が証明された。定理の証明に移る。 定規のみを用いて与えられた線分に平行な直線を引けると仮定する。ここで、平面上に円Dがあるとする。円Dと2点で交わるような、互いに平行で異なる3直線L,\, L', \, L''を考える。また、Lと平行ではなく、Dと2点で交わるような、互いに平行で異なる3直線M,\, M', \, M''を考える。ここで、L, \, L'と円Dの4交点のなす四角形の対角線の交点をXL, \, L''と円Dの4交点のなす四角形の対角線の交点をYとすると、XYは円Dの中心を通る。同様に、M, \, M'と円Dの4交点のなす四角形の対角線の交点をX'M, \, M''と円Dの4交点のなす四角形の対角線の交点をY'とすると、X'Y'は円Dの中心を通る。このとき、XYX'Y'の交点は円Dの中心を通る。これは、補題に矛盾する。_\Box

以下の図では、線や点の名前などは違いますが、状況を模しています。

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