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サイクロイドと等積変形 ~カヴァリエリの原理の面白い応用~

こんばんは、simulo_yuiです。

simulo_yui (@simulo_yui) | Twitter

 

現在の日本の学習指導要領では数Ⅲで学ぶことになっているサイクロイド。最速降下曲線(スロープのようにしたときに一番早くボールが下りてくる曲線)であることや、その等時性などさまざまな面白い性質を持っています。数Ⅲを学習したことがある方なら、その長さや、サイクロイドとx軸で囲まれる面積をいやというほど計算した記憶があるのではないでしょうか。今回はそんなサイクロイドとx軸で囲まれる面積を数Ⅲを使わずとも中学生でも出すことができる、というお話です。

サイクロイドとは?

サイクロイドとは円が直線上を滑らずに転がるときに、直線と接していた円上の点がまた直線と接するまでに動く軌跡のことを言います。口で説明するよりも下の図を見てもらった方が理解が早いと思います。

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上の図では半径1の円が転がっています。中心O'(t,1)(t \in \mathbb{R}, 0 \leq t \leq 2\pi)にあるとき、点 Pの座標は以下のようにパラメータ表示されます。

P(t-\sin t,1 - \cos t)

サイクロイドとx軸で囲まれる部分の面積

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ここで、サイクロイドとx軸で囲まれる部分の面積、すなわち上の図の赤線部の面積Sを考えると、パラメータ表示を利用して、

S =\int^{2 \pi}_0 y dx = \int^{2 \pi}_0 y \frac{dx}{dt} dt = \int^{2 \pi}_0 (1-\cos t)^2 dt =3\pi

となり、求める面積は3\piであったことが分かる。

カヴァリエリの原理を用いて面積を求める

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上の図の横線部の面積Tを考えます。真ん中の円の面積は\piなので、S=3\piを示すには、T=\piになることを示せばよさそうです。。

真ん中の円の中心をO'、円上の点でO'Mがx軸と平行になるような点をMとし、\angle AOM=\angle BOM = \theta (0 \leq \theta \leq \frac{\pi}{2})となるような円上の点A,Bをとり、サイクロイド上の点P,QAP \parallel BQ \parallel x軸となろようにとり、C(\pi,0),O(0,0)とします。

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このとき、AP+BQ=OC=\pi \qquad \cdots (1)が成立しています!

今からこれを示します。

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上の図のように、動円がPを通るときの中心をO''すると、AP=O'O''

が成立しています。ここで、動円が円O''の位置から円O'の位置に動くまでには、円は\frac{\pi}{2}+\theta回転しているので、O'O''は、円の中心角が\frac{\pi}{2}+\thetaの弧の長さに等しく、O'O''=\frac{\pi}{2}+\thetaで、AP=\frac{\pi}{2}+\thetaである。

同様に、BQ=\frac{\pi}{2}-\thetaとなる。よって、AP+BQ=(\frac{\pi}{2}+\theta)+(\frac{\pi}{2}-\theta)=\pi(1)が確かに成立します。

ここで、面積Tを求めるために次のような操作をします。

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y=1/2の線で図形を切り、上の部分を横に持ってきます。操作後の図が下図です。

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そしてこれをカヴァリエリの原理を用いて等積変形すると(1)より、底辺が\pi高さが1の長方形になります。

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よって、T=\piが分かりました。よって、S=3\piになることも分かりました。

カヴァリエリの原理について

カヴァリエリの原理とはある2つの立体や平面図形を同じ面で切断した時の面積や長さが常に等しいならば、二つの立体や平面図形の体積や面積は等しいというものです。詳しくはWikipediaを参照してください。

ja.wikipedia.org